『バロン』
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とにかく大好きですね~~。全ジャンル映画のマイベストの5本の指には必ず入って来ます。当時劇場に足を運ぶ事7、8回。その後ビデオを既に入手しているにもかかわらず、DVDも思わずゲット。そうして、何時でも家庭にて見れる環境にありながら、3、4年前に新宿でリバイバル上映した時も嬉々として出かけて行きました~~。
公開当時やっていた映画紹介番組(「ハロームービーズ」だったかな?)で、バロンの気球が大空にぽっかりと浮んでいる映像を目撃した時からもう虜でした。その翌週だったか、ギリアムのインタヴュ-もまた強烈でしたし…(インタヴュ-される側が、かくれんぼしてインタビュアーを出迎える光景を初めて見ました…笑。最近ではリポーターが受けを狙って逆にゲストを引かせちゃうような場合をよく見かける中、監督自らが…。もはや、あれは空前絶後ではないかと…笑)
因に、教育テレビの人形劇と共にここまで大きくなって来た私にとって、原作のドイツ民話「ほら吹き男爵の冒険」は馴染みの物語。でも、まさかその後、世界一足の早い男や、地球の裏側のリンゴの木の実に停まった蠅の目を打ち抜く男の登場するそのトンデモ世界を、実写映像として見れる日が来ようとは…(感涙)
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特撮
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まだまだCG等が無かった時代の特撮の映像センスはちょっと凄まじい位に素敵です。例えば、星座がそのまま宇宙を駆け抜けたり、月が本当に丸から三日月に欠けていったりetc…。それを物凄くローテクで映像化しているだけに、逆にCGでは味わえない妙なリアリティが出ている様な気が…。
特に、予算の都合上、ハリボテ(本当の書き割り…笑)になってしまった月の世界のセットは、むしろ結果としてどんな大金を投じた大掛かりなセットや、CGで縦横無尽に描き切った映像群よりも、この映画の月の世界(怪しいチープさ)をこれ以上なく如実に表現していると言えるんではないかと。
一度、映画館の最前列で見た時に、月の王様の首が飛ぶシーンで思いっきり糸が見えたりしたものの、そんな事はこの作品の評価、興奮の妨げになろうはずも無く、逆にそれを見れた事に妙に興奮したのを覚えています。(因に、その際に初めてビーナス役のユマ・サーマンのバストトップが一瞬写っている事も確認。笑)
それから、バロンが場面毎にその見た目の年齢を変えて行くシーンを見るに及んで、初めてそれが特殊メイクである事に気付いたくらい自然な老けメイクも凄い。
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キャスト
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まず、バロン役のジョン・ネビルが素晴らしい。私の中ではもはや彼=バロンの図式がなりたってますから…(映画版『Xファイル』に彼の姿を確認した時も、「はて?何故にバロンがここに?」と…笑)。プロフィールを見ると、英国演劇界では、その紹介に数ページを費やしている程の有名なシェークスピア俳優なんだそうで、そういった彼が大真面目に、(ある意味大不真面目?な…)バロンを楽しんで演じている姿にはある種の感動がありますね~~
それから、『未来世紀ブラジル』から一転、小狡い役人を演じたジョナサン・プライスを始め、何故だか名前は伏せられているロビン・ウイリアムスの分裂症演技、劇団の座長、その他劇団員と家来の2役をこなした3人組(内一人はモンテイ・パイソンのエリック・アイドル!)、月の女王(座長の妻役兼任)、地底火山の神役のオリバー・リードetc…誰もが、このトンデモ物語(褒め言葉)に無くてはならない存在だけれど、その中に在ってバロン並みに重要な役柄をこなしているのが死神。(まあ、殆どが人形を使った特撮なんだけれども…)それでも、見事に主役級の存在感を出している。今の所、ベスト死神役だと断言。笑
あ、後、忘れてならないのが、数年に渡る撮影期間中、欠けた(抜けた?)歯を終ぞ生やさなかった(監督談)小さな名女優、サラ・ポリー!(現在の成長した彼女の姿を見ると、当時のユマ・サーマンに激似と思うのは私だけ…??)
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ハチャメチャセンス
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まず、世界一足の早い男、バート・ホールドの疾走シーンの素晴らしさ。アメリカの漫画映画でよくある、走り出す前の溜め(地面も掘れちゃう)を伴ったバビュ~~~ン映像を実写で再現しているという一事だけでも感謝状もの。
それから、本作で一番好きなのが、バロンが海から自力で上がって来るシーン。行方不明のバロンを探して泣き叫ぶ家来一同に、自分のチョンマゲを自分で引っぱって海面から浮き上がり、遂には馬ごと空中に浮き上がった(自然の法則さえも超越した!!笑)バロンの放つ一言がもう最高!(曰く「早く助けろ!…腕が疲れる…」笑)
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幻想vs現実
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『バンデッドQ』に始まるのが、所謂ギリアムの幻想3部作。イマジネーションと現実の対決を描いたこの3部作中、まず『Q』では、その対決に”神”という超越者が分け入ったお陰でうやむやの内に引き分け状態で終わり、続く『ブラジル』では無惨に現実に押しつぶされたイマジネーション(幻想)は、遂に本作に於いて、現実に対して高らかに勝利の歌声を聞かせてくれる!!
…でも、一方、興行成績という数字面(現実)では、明らかに敗北している映画(幻想)というのが悲しくも腑に落ちない所。(何時か見た、元の取れなかった失敗作ランキングで上位を争っていた記憶が…涙)
余談ながら、くしくも同じ年に封切られ、その数字の面では大成功を収めた『インディ・○ョーンズ 最後の聖戦』を見た時に、やたらと熱狂していた世間を尻目に、どうにも贋もの感(計算高い大人が子供の振りをして、「これをこうすればお前等は有り難って飛びつくんだろう」的な、イマジネーションとは名ばかりのそろばんづくのいやらしさ)を感じて仕方なかった私。
『バロン』こそは、テリー・ギリアムという図体のでかい子供が、本気でイマジネーションの映像化に取り組んだ”本物”の映画だと、当時も今も感じている。
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『バンデッドQ』
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最初にテレビで見た時に、船の下から海坊主が現れた(海坊主が船を帽子状に冠っている)シーンで目が釘付けに。その後、メーキングを読んで、あの海坊主役の役者さんは、実は物凄く小柄なんだと知って驚く。(正にギリアムマジック!)
余談ながら、結果的に幻に終わった『ドンキホーテ』のドキュメント映画『ロスト・イン・ラマンチャ』でも同様のシーンの撮影風景を垣間見れて感激。
更に余談ながら、本作の見所の一つが、所々挿入的に登場するマイケル・ペリンとシェリー・デュヴァルコンビ。何を隠そう、モンティパイソンメンバーの中で役者として一番贔屓にしているのがペリン。(『ブラジル』の方が役は大きいけど、本作のような扱いの方が、彼の持ち味的には本領発揮ではないかと…)それから、前年「シャイニング」に主演した女優と同じとは思えないシェリー・デュヴァルも最高!
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『未来世紀ブラジル』 |
世間的には、ギリアムといったら本作という声も多く見受けられるも、上記のようにあくまで私はバロン派。(といって、本作を決して嫌いな訳では勿論なく)
最近流行り(?)のレトロフューチャー的な背景が最高。とにかく必要以上に配線やダクトが縦横無尽に張り巡らせれた世界は、それだけで管理社会の理不尽さ、馬鹿馬鹿しさを象徴していながら、そんな事よりまずビジュアル的にインパクト大。
時折挿入される主人公の幻想シーンも素敵。ここにだけ明るい青空が登場するのも効果的。悪夢の象徴、巨大な鎧武者役で、後に『バロン』でアルブレヒトを演じるウィストン・デニスも(顔なしで)登場。
ラストは、結局何パターンかが存在する『ブレード・ランナー』と違って、一貫してアンハッピーエンド(幻想が現実に無惨に踏みにじられる)。そこら辺が興行成績を考える会社側との衝突の要因になり、監督から映画会社の上層部役員に宛てた有名な手紙も生まれ(曰く「あなた方はケツの穴です」)、やがてこの対立は有名なドキュメント本「バトル・オブ.ブラジル」を生む。
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『The Man Who Killed Don Quixote
(ドン・キホーテを殺した男)』
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結局実現しなかったギリアム久々の(幻の)幻想全開映画。
『未来世紀ブラジル』が「バトル・オブ.ブラジル」を生んだように、本作(の製作)はドキュメント映画『ロスト・イン・ラ・マンチャ』を生む。
この『ロスト…』、監督の壮大なるイマジネーションが、様々な姿で現れる現実(天災、人災)によって無惨に踏みにじられて行く過程をつぶさに記録。ある意味、ギリアムを主人公にしたドキュメント版『ブラジル』の様相も…。よく、彼の映画は物語と製作の現場がリンクしているとは言われるけれど、今回のタイトルはそういう意味で妙に象徴的過ぎ。とにかく、私的には今までで一番見ていて辛い映画でした。(やはり、彼には、いきなりソファーの影に身を潜め、待ち伏せてインタヴュア-を煙に巻くような、あの悪戯小僧の笑顔が似合うもの…)
それにしても、ジャン・ロシュホールのドン・キホーテ役はマジで見てみたかったな~~涙
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